多焦点眼内レンズは患者側の期待度が非常に高い反面、どの方にも適性がある訳ではなく、またレンズにもそれぞれ特性があり、すべての方に100%の満足を得られるような多焦点眼内レンズは現時点では存在しません。当院で手術を受ける方には、数多くある種類の中から自分自身の生活環境に一番合った眼内レンズを選択して頂き、術前の検査にて多焦点眼内レンズの適性がない場合には決してお勧めしません。
多焦点眼内レンズをご検討されている方の理解を深めるために、多焦点眼内レンズの、特徴や限界を記載しています。多焦点眼内レンズを検討されている方には、これらの内容をご参考に、ご自身のライフスタイルと照らし合わせて熟考して頂ければ幸いです。当院での手術をご検討されている方には、適性検査を受けて頂き、個々の検査データーに基づいて執刀医とよく相談して最終的なレンズ選択を決定します。折角多焦点眼内レンズをご希望されても、角膜乱視や他の眼科疾患など様々な理由で「お勧めできない」と判断する場合もありますので、ご了承ください。
アメリカのAMO社から2020年末に国内販売された最新型の多焦点眼内レンズ(通称:シナジー)です。
従来の二重焦点眼内レンズと焦点深度拡張型眼内レンズ(EDOF)を合わせた新しいコンセプトの連続焦点型の多焦点眼内レンズです。この眼内レンズの特徴は、二重焦点眼内レンズ(遠方と近方)と焦点深度拡張型眼内レンズ(遠方から中間)、2つの作用を合わせることにより、従来の多焦点眼内レンズでは解決できなかったあらゆる環境下で遠方から近方まで連続的に明視域を広げ、より自然な見え方が期待できます。
シンフォニーに搭載されていた色収差補正テクノロジーは、このシナジーにおいても継承し、遠方~近方のコントラスト感度を向上します。また、角膜乱視を矯正することも可能な為、乱視の強い方にも適応することが出来ます。
アメリカのアルコン社から2019年に発売され、初めて国内承認を取得した3焦点型の多焦点眼内レンズです。
今まで以上にレンズの透明性維持が期待できる新素材を採用し新たに生まれ変わりました。レンズの特性はENLIGHTENテクノロジーを採用しており、遠方から近方まで幅広い距離で良好な見え方が期待できます。
今までAlcon社のレストアで不向きとされていた、暗い所での中間・近方作業も改善されており、幅広い生活スタイルの方に適応できる多焦点レンズです。
また、非球面構造による像のボケの軽減と黄色い着色による網膜保護効果を兼ねそなえています。
ENLIGHTENテクノロジーと呼ばれる光学デザインにより瞳孔径が大きくなるほど、遠くへの光配分を大きくし、
不快なグレア・ハローを軽減し、3焦点眼内レンズ中で最も光学的エネルギーロスが少ない為、コントラスト感度も良好です。また、角膜乱視を矯正する事も可能な為、乱視の強い方にも適応する事が出来ます。
アメリカのAlcon社から2023年6月に国内販売された最新型の多焦点眼内レンズ(通称:ビビティ)です。
焦点深度拡張型(Extended Depth of Focus:EDOF)と呼ばれるタイプの多焦点眼内レンズとなります。新しい技術である波面制御テクノロジーにより、連続的に焦点(ピントの合う幅)を拡張し、従来の多焦点眼内レンズに見られるグレア・ハローといった視覚障害を大幅に軽減し、単焦点眼内レンズと同程度にしています。
遠距離・中間距離から実用的な近方距離まで切れ目なく見えますが、読書・新聞・近方の細かい作業などは眼鏡が必要な場合があります。夜間まぶしい光もクリアに見えるため、眼鏡の使用頻度を減らしつつ、夜間に自動車も運転したい方などに向いています。
多焦点眼内レンズを使用する白内障手術を受ける場合、当院では選定療養の費用として、通常の診療費とは別に多焦点眼内レンズの金額をご負担いただきます。
選定療養とは、患者さんご自身が選択して受ける追加的な医療サービスで、その分の費用は全額自己負担となります。令和2年4月より、術後の眼鏡装用率の軽減を目的とした多焦点眼内レンズを使用する白内障手術は、厚生労働省が定める選定療養の対象となりました。
当院は多焦点眼内レンズの白内障手術を行う医療機関として届出をしています。多焦点眼内レンズの対象となる患者様には診察時に詳細をご説明致します。
尚、未承認である自由診療扱いの多焦点眼内レンズは取り扱っておりません。